JUKI 1991年アニュアルリポート表紙。白地にミシンや服、ハイヒールの小さなイラストを縦に配置。
JUKI 1991年アニュアルリポート表紙。白地にミシンや服、ハイヒールの小さなイラストを縦に配置。
JUKI 1991年アニュアルリポート中面。黒ページにカラフルな棒グラフ、白ページに目次と英文。
社長メッセージページ。黒地に白い英文、白地にスーツ姿の社長の全身写真とサインをレイアウト。
未来へのビジョンページ。黒地に英文とグラフ、白地に世界地図と拠点写真を配した見開き。
研究開発ページ。黒地に白い英文、白地にCADに向かう技術者の写真や図面を配置。
生産設備ページ。黒地に英文、白地に工場内の機械や、ロボットアーム、作業風景の写真をレイアウト。
事業レビューページ。黒地にミシンの小写真と英文、白地にファッションショーとバッグの写真を配置。
市場分析ページ。黒地にカラフルな棒グラフと円グラフ、下部に詳細な英文を掲載した見開き。

JUKI Annual Report 1991:グローバルニッチトップの技術を編むエディトリアルデザイン

1991年度におけるJUKI株式会社(旧:東京重機工業株式会社)のアニュアルリポート(Annual Report)制作プロジェクト(部分担当)です。 1938年の創立以来、工業用ミシン分野で世界シェアトップを走り続けるJUKIは、1991年当時、すでに「世界の縫製工場」を支えるインフラ企業として確固たる地位を築いていました。 本プロジェクトは、同社が工業用ミシンのリーディングカンパニーから、産業装置や家庭用ミシンを含む多角的な「メカトロニクス」の旗手へと進化を遂げる過渡期に位置しており、その高度な精密技術とグローバルな事業展開を、国際的な投資家層へ向けて論理的に提示することが求められました。 アニュアルリポートは、企業の財務的な健全性を示すだけでなく、経営陣のビジョンや技術的優位性を一貫したストーリーで伝える「ブランド構築」の核となるメディアです。 本制作において一部のデザインを担当するにあたり、JUKIが持つ「ものづくりへの真摯な姿勢」をいかにして紙面から漂わせるか、そして複雑な多角化事業をいかに整然と構造化するかに注力しました。 単なる事実の羅列ではなく、精密機械メーカーらしい緻密さと、世界市場を俯瞰するダイナミズムを共存させるエディトリアルデザインを追求しています。

技術の精緻さと多角化する事業を統合する設計アプローチ

  • 精密機械のアイデンティティを反映したグリッド設計: 工業用ミシンや基板実装機(産業装置)といった精密なプロダクトを扱う企業の特性を鑑み、極めて厳格かつ洗練されたグリッドシステムを導入しました。1991年当時の複雑な財務データや事業セグメントを整理し、十分なホワイトスペース(余白)を確保することで、情報の透明性を高めると同時に、JUKIブランドの「信頼性」を視覚的に担保しています。
  • グローバル市場に呼応する知的なタイポグラフィ: 世界中のステークホルダーが閲覧することを前提に、国際基準の可読性を備えた欧文書体を選定しました。見出しから本文、脚注に至るまで、文字のウェイトやカーニングを微細に調整することで、誌面全体から知的で落ち着いた印象を与えています。これは、技術力だけでなく、企業の「品格」を伝えるプリントメディア(Print Media)としての重要な役割です。
  • 多角的な事業価値を伝えるセグメント構成: 工業用ミシン、家庭用ミシン、産業装置といった異なるターゲットを持つ事業を、一貫したデザイン言語で統合しました。それぞれの事業が持つ独自の技術優位性を論理的に解説し、それらが「メカトロニクス」という一つの核で繋がっていることを視覚的に表現。投資家が同社の将来的な成長性を直感的に理解できるインフォグラフィックの配置にこだわりました。

本プロジェクトの成果とデザインの根拠(なぜ)

本アニュアルリポートの制作は、JUKIという企業が持つ「グローバルな影響力」と「ミクロな精密技術」を、一つの誌面という空間で調和させるプロセスでした。 一つ一つのレイアウトや構成に論理的な根拠(なぜその配置なのか)を持たせることで、装飾的な美しさを超え、企業の「知性」と「誠実さ」を証明する戦略的なツールへと昇華させています。 1990年代初頭、デジタル化が加速する前夜のこの時期に、プリントメディアを通じて企業のブランド価値を最大化させた経験は、私のエディトリアルデザインにおける重要な基盤となっています。 複雑な情報を整理し、クライアントの本質を射抜くための「設計」としてのデザイン。 その重要性は、現代の高度なマーケティング環境においても変わることはありません。 世界中の縫製現場や製造現場を支えるJUKIの情熱を、一冊の記録として結晶化させたこのプロジェクトは、私のキャリアにおいて、企業の社会的意義を可視化することの責任と喜びを教えてくれた重要な実績です。
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